お知らせ 令和6年度(公社)生体制御学会第4回Web講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加しました

令和6年11月3日(日)に令和6年度(公社)生体制御学会第4回Web講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加しました。

9:00~10:30

「糖尿病の薬物療法について」

(公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座 

愛知医科大学客員教授(神経内科)

岩瀬 敏 先生

本日は糖尿病の薬物療法、特に糖尿病の歴史と血糖値について御講義頂きました。

「糖尿病と思われる病気は、紀元前1500年代の古代エジプトの医学書に「多量の尿を出す病気」と記され、また、今から約2000年前、ローマでアンタレオスという本に「尿の流失がサイホン(diabetes)のような病気」について症状を詳細に記録しています。それに依りますと、「この病気は不思議な病気で、尿に手や足が溶けて出てしまう。病気の経過は共通していて、腎臓と膀胱がやられ、患者は片時も尿を作るのを止めず、とめどなく尿をして、まるで水道の蛇口から出るようである。病気の本性は慢性で、形をとるまでに長い時間がかかるが、一旦病気が完成してしまうと患者は短命である。」と記されていました。

平安時代1027年になりますと日本でも藤原道長の死にまつわる記録が出てきます。藤原道長は当時の政治中枢の宮中を権力下に置いて藤原家の全盛を築いた人ですが、この人も糖尿病で亡くなっています。道長の病状について「のどが渇いて水を多量に飲む。身体痩せて体力が無くなった。背中に腫れ物が出来た。目が見えなくなった」と記されています。

糖尿病の治療薬であるインスリンの発見は20世紀最大の発見のひとつでありました。1869年に、ドイツで膵臓に新たな細胞群が発見され、1893年に、フランスでその細胞群をランゲルハンス島と命名されました。1918年に、英国でランゲルハンス島からの内分泌ホルモンをインスリンと命名、1921年、カナダでインスリンの抽出に成功、翌年、インスリンの人での効果をはじめて確認できました。

インスリンの発見、糖代謝の研究、脳下垂体ホルモンとの関連やアミノ酸塩基配列、立体構造の同定、ペプチド合成法の開発など、糖尿病研究において、ノーベル賞が7つ受賞されています。

血糖値が上昇すると腸からのグルコスがでんぷんとして吸収されます。それで血糖値が上がったと指令が出ます。

働きとして

①膵臓からインスリンが出て、膵臓から肝臓にかけてグリコーゲンを作るように指令が出る。

②脂肪組織では血糖値を下げるために脂肪を作るように指令が出る。

③筋肉に対しては筋肉を動かすためのエネルギーとして使うように指令が出る。

このように以上がインスリンの臓器に対する三つの働きになります。薬物療法については次回詳しくお話します」と御講義頂きました。



10:40~12:10

「思い出せない脳」feat. Kandel 神経科学 season2

第4章 抑制が働いて思い出せない(思い出せない脳)

・思い出そうとすればするほど、思い出せなくなるのはなぜか

・選択と集中を担う抑制性の神経伝達の重要性

→カンデル神経科学 13 章(中枢神経系における シナプス統合)

53 章(潜在記憶を貯蔵する細胞機構と個性の生物学的基盤)

 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座       

名古屋大学名誉教授

澤田 誠 先生

本日は、澤田誠先生が著された「思い出せない脳」の中から、思い出そうとすればするほど思い出せなくなるのはなぜかについて御講義頂きました。

「脳が働くのは抑制性がしっかりと働かないときちんとした記憶ができなかったり、意識ができなかったりします。例えば、知っている俳優が出てきても、どのドラマに出ていたかは覚えているのに、名前だけが出てこない。それが思い出そうとするほど思い出せないという現象で、そこには抑制性の神経回路が強く働いています。

その抑制をする細胞というのが、これもたとえ話ですが、小学校の朝礼で、小学生が朝礼前でガヤガヤして整列もしていない、これを脳だとします。校長先生が登壇する前に、体育の先生が整列を促し、小学生が整列をして静かになる。そして校長先生のお話が伝わるようになるのですが、その体育の先生が抑制系の働きの細胞になります。脳(小学生)が勝手に働いているところを、きちんと行動できるように制御するのが抑制性(体育の先生)の細胞ということになり、情報(校長先生のお話)が正しく入力されます。

神経細胞というのは先程の話の小学生のように勝手に自発活動をします。高頻度に自発活動が起こる場合と、ゆっくりの場合といろんなパターンがありますが、何も抑制はないと勝手に活動してしまいます。

ところが抑制性の入力があると、この中で重要な興奮は残しますが、いらない興奮は抑制します。つまり、勝手に活動すると脳の情報処理がうまくいきません。要するに、混乱してしまうところを混乱しないように交通整理をするのが抑制性というわけです。このように、まだ仮説ではありますが、人間が人間たる所以は、抑制性が働いているのではないかと思います。」と御講義頂きました。