一般社団法人 生体調整機構制御学会設立記念講演・設立総会に参加して 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸療院 院長 皆川 宗徳
平成21年4月5日(日)春爛漫の晴天の中、名古屋市立大学川澄キャンパス付属病院3階大ホールにおいて、一般社団法人生体調整機構制御学会設立記念講演・設立総会が約170名の出席者を得て開催されました。
記念すべき設立総会に、私は実行委員の一人として参加させて頂けたことに感謝するとともに、昭和47年10月1日に(社)全日本鍼灸学会愛知地方会が設立されてから、今日に至るまでの37年間という長きにわたり、鍼灸界発展のため、学術の進歩発展のために並々ならぬご尽力を賜りました黒野保三先生に心より感謝申し上げます。
今回、一般社団法人生体調整機構制御学会設立記念公開講演の講師として、東洋医学研究所®所長 黒野保三先生が「生体調整機構と鍼灸施術との関わりについて」と題して講演されました。
○講演の内容
現在、医療行政に不安を抱える人が多い中、「医療は社会福祉の一つである」という考え方から言うと、本来、東洋医学、西洋医学に分ける必要はなく、大切なのは「患者さんにいかに良い施術が提供できるか」という基本的な医の原点に立ち戻って改めて医学・医療を考える必要がある。
臨床鍼灸の現場では、摩訶不思議と思われる現象にしばしば遭遇する。
例えば、長期間色々な治療を受けても、治らなかった症状が一回の鍼治療で嘘のように良くなった、なかなか眠れなかったのが、一回の鍼治療で眠れるようになった、花粉症の人に鍼をした瞬間に鼻づまりが良くなった、癌の放射線治療、抗癌剤治療の副作用の症状に対し、鍼治療で副作用の症状が改善した等々、数限りない摩訶不思議な現象に遭遇する。
今後、臨床鍼灸の現場で得られる摩訶不思議と思われる現象を交えた臨床研究、それに関わる基礎研究等を東西両医学が連携して集学的に行う研究システムの確立が是非必要であり、そのために生体調整機構制御学会の必要性を示された。
研究のあり方について、自然現象(鍼灸現象)が正しければ、そこに必ず自然科学の理論があり、それを追求する姿勢こそが真の研究といえると強調された。
黒野保三先生のこれまでの研究業績は、自然現象の理論の追求すなわち「真実の探求」に終始一貫しておられ、その一部を今回紹介された。
「無徴候・有訴群患者の自覚症状、自律神経失調症と診断された患者の自覚症状」
「長期鍼治療継続患者の自覚症状と第三者の評価」
「不定愁訴に対する鍼治療の研究」
「慢性肝機能障害への鍼治療の研究」
「鍼治療と超音波の併用療法による種々の疾患に対する有効性」
「経穴の深さと広さについて」
「マウスに対する鍼治療により老化を抑えた基礎研究」
「鍼治療による免疫機能の増強について」
「糖尿病に対する鍼治療の研究」
「心拍のゆらぎ測定による自律神経機能の研究」
「鍼灸師の熟練者とそうでない者の技術の差」
このように、様々な角度から鍼灸を研究していき、真の鍼灸学を作り上げなければならないと強調された。
将来の展望として、臨床標榜施術標記を示され、理想の医療体制というのは、現在の一般内科、鍼灸施術、湯液療法を行う総合内科を作り、内科専門医、鍼灸師を配置して、患者さんが病院に行くときにはまずそこを受診し、他の専門医が必要な場合には、各科と連携して治療を行なうことが出来る医療体制が患者さんのためであり、医療経済的にも医療費を抑えることが出来るという考えを示された。
以上が黒野保三先生の講演の主な内容ですが、一般社団法人生体調整機構制御学会の設立にあたり、今まで何をしてきたのか、今は何をしているのか、将来どうあるべきなのかを過去・現在・未来の視点から分かりやすく説明をいただき、これからの学会の活動に大きな指標を与えていただきました。公開講演でありましたので、一般市民の参加者の方々にも大変有意義な講演であったと思います。
黒野保三先生の講演を拝聴し、「科学は先人の業績を紐解くことによって発展する」を今一度肝に銘じ進んでまいりたいと思います。
黒野保三先生の講演後、設立総会が行われました。
(社)愛知県医師会長妹尾淑郎先生、名古屋市立大学長西野仁雄先生、日本薬科大学臨床薬理学教授永田勝太郎先生はじめ、鍼灸学校関係の先生方が来賓としてご臨席を賜り御祝辞を賜りました。
設立総会では、司会を務めさせて頂きましたが、大変厳粛な雰囲気の中で行われ盛会裡に終了しましたことに、安堵とともにこれからの使命に身が引き締まる思いであります。
最後に、一般社団法人 生体調整機構制御学会の設立の意義を黒野保三先生の講演を振り返り今一度深く認識し、東西両医学共通の土俵に立てるよう日々精進してまいりたいと思います。