悪玉HDL-Cについて 東洋医学研究所®グループ弥富鍼灸院 院長 服部 輝男
HDLコレステロールが全て善玉とは限らない
私が循環器疾患を勉強し始めたころから、HDLコレステロールは多いほどよいとされてきましたが、最近様子が変わり、「健康診断・血液検査MAP」のサイトから下記のようなメールが送られてきました。
「LDLコレステロールは悪玉、HDLコレステロールは善玉と呼ばれていますが、近年、構成蛋白の酸化や欠損などにより、機能に異常をきたした酸化HDLや機能不全HDLといった悪玉HDLの存在が明らかになってきました。」というメールです。
ここでLDLコレステロール、HDLコレステロールがそれぞれ悪玉と呼ばれたり、善玉と呼ばれたりする理由を思い出してみましょう。
LDLとHDLはコレステロールを運びますが、まったく逆の方向に運びます。HDLはコレステロールを末梢の組織から肝臓に運搬するのに対して、LDLはコレステロールを肝臓から末梢組織へ運搬します。ということは、この場合の末梢は体の隅々の血管と考えられるので、末梢にコレステロールがたまるということは血管などについて、動脈硬化などを起こす可能性を引き上げることになります。そこで、反対の作用をもっているHDLが頑張ってコレステロールをもとに戻しているから、HDLはたくさんあった方が良いということになります。また、HDLには酸化を抑える、炎症をとめるなどに代表的とされる体にとって良い作用もたくさん報告されています。
その作用に期待してHDLを増やす薬が開発されました。その代表的なものが、コレステロール転送蛋白(CETP)阻害薬と呼ばれるものです。
そして実際の結果が報告されています。「CETP阻害薬の一つとして開発されたtorcetrapibは、12ヶ月間投与の結果、HDLコレステロール値が狙い通り72.1%上昇しましたが、心血管イベントの発生率や総死亡率が有意に増加したことが判明し、開発は中止となっています。考えられる原因として、CETP阻害薬によって増えたHDLが機能不全HDLであった可能性があります。
CETPがもともと欠損するCETP欠損症の患者のほとんどは、HDLコレステロールが高値になります。HDLが100mg/dl以上になる高HDL血症は、動脈硬化抑制作用が強く、長寿につながると考えられてきましたが、CETP欠損症患者は同年齢の健常者に比べ、頚動脈の動脈硬化が進んでおり、冠動脈疾患を有していたり、長寿でないことが判明しました。」と述べられております。
このように、理論どおりの正しいHDLが増えれば、HDLの機能が増強できることは容易に想像できますが、現実にはそのようにはいきません。
HDLが機能不全になるのは、炎症や酸化が原因と言われています。例えば、喫煙はLDLとともにHDLも酸化します。HDLの量のみならず、質にも注目すべきといえます。
人間の体は日頃から健康管理をし、適正な体作りをすることが正しい反応が起きる基本となります。HDLのみならず、全身の質を上げる生活こそが肝心ではないでしょうか。
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