(公社)生体制御学会第265回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました

平成25年7月7日(日) (公社)生体制御学会第265回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

 
(公社)生体制御学会第265回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)

 
9:15~9:30

第19回愛知県鍼灸生涯研修会開講式と、第17回(平成24年度)愛知県鍼灸生涯研修会における(公財)東洋療法研修試験財団発行の生涯研修終了証書の授与が行われました。

挨拶をする副会長の服部輝男先生
 
来賓挨拶をする(一社)愛知県鍼灸マッサージ師会
会長の山ノ下富美雄先生
 
代表で生涯研修終了証書を受け取る赤石望先生

 
9:30~10:20 臨床鍼灸医学研究
(社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「鍼の刺激量について」
(公社)生体制御学会名誉会長
黒野 保三 先生

 今回は、鍼の刺激量と治療者の人間性についてのお話しがありました。
 「外国の常識では、得気という強い刺激をする、交感神経を優位にするのが鍼治療ということになっています。しかし、我々の鍼は非常に柔らかい、優しい鍼をおこなっています。患者さんに対して『痛い鍼はよくない』、『長く時間をとらせる鍼はよくない』、『高い報酬をとるのはよくない』という3点から治療をおこなっており、癒しの治療、副交感神経を優位にする治療をしています。
 この副交感神経を高める鍼治療の研究をしているのは、我々が世界ではじめてになります。過去の研究で合谷というツボに電流を流し、胸部と腹部の感覚の変化を調べたところ5~7mmの深さで閾値の上昇がもっとも高いことがわかりました。この深さというのは筋膜にあたります。
 さらに犬の精巣のポリモーダル受容器の存在するところに20g(弱刺激)と40~60g(強刺激)で比較したところ、毎回、継続的に閾値の上昇がみられたのは20gでした。
 以上の研究結果から、筋膜上に20gの刺激を加える(筋膜を貫かない)ことが鍼の適切な刺激量だということがわかりました。
 この手法(筋膜上圧刺激)を日本の鍼として、我々は世界に「副交感神経を優位にする鍼治療」として発信しており、これからも研究を続けていきたいと思います。
 このように鍼灸医学理論は現象をしっかりと捉えたサイエンスで構築する必要があります。一方、鍼治療を行う施術者は精神哲学を基に施術をする必要があります。
 人間ができていなければ、決していい治療はできません。精神哲学により人間性を高め、患者としっかりと向きあえる自分を作らなければなりません。老子・荘子の老荘思想を勉強し、浩然の気を養い、感謝と謙虚の心を常にもち続けることが大切であります。」と教えて頂きました。

 
 
 

10:30~12:00 痛みの基礎
「痛みの基礎的神経機構と筋性疼痛の神経生理学」  

中部大学生命健康科学部理学療法学科 教授   
水村 和枝 先生

今回は痛みについて詳細なお話しがありました。
「痛みの定義は、組織損傷、または組織損傷に関連する不快な感覚的、精神的な経験になります。現在、fMRIやPETなどの検査機器の発達により、これまで痛みに関係がないと言われてきた大脳皮質が痛みの場所や強さ、経験などの非常に関わっていることがわかってきました。
 痛みの種類に痛覚過敏があり、末梢で起こる変化として、ブラジキニン、プロスタグランジン、ヒスタミンなどの化学物質の放出、痛み受容器の変化、数が増えるなどがあり、中枢では、脊髄における興奮、IL-1による迷走神経を介した痛覚過敏、下行性抑制系の抑制などがあります。
 一般に筋肉痛と呼ばれるものは、正確には遅発性筋痛といいます。これは、今まで筋微細損傷や炎症のためにおこると言われてきました。私達はそれを『本当かな?』と研究し、必ずしも筋微細損傷や炎症がおこる必要がないことがわかりました。そこで、NGF(神経成長因子)という物質に着目して研究を重ねたところ、遅発性筋痛はNGFが中心に関わっていることをつきとめました。」と教えていただきました。

13:00~13:50 疼痛疾患の基礎・臨床、診断と治療
「頚肩腕痛に対する臨床研究について」

(公社)生体制御学会監事
(公社)生体制御学会研究部疼痛疾患班班長
河瀬 美之 先生

 今回は、本会の名誉会長である黒野保三先生の論文『鍼と超音波の併用による局所療法の鎮痛効果』の中の頚腕症候群・上腕神経痛についての紹介と、(公社)全日本鍼灸学会三重大会で発表した『鍼灸院における頸肩腕痛患者の実態調査』についてわかりやすいスライドを用いて詳細な説明がありました。
 また、頸部の疼痛をきたす主な疾患や鑑別ポイントについての説明がありました。

 
14:00~14:50 疼痛疾患に対する症例報告及び症例検討

経絡治療学会東海支部長
坂本 幹男 先生

 首痛・腕が挙げられないことをを主訴とした症例について、東洋医学的な視点から臨床の経験も踏まえて報告がありました。
 

  このマークのついている先生は東洋医学研究所®グループに所属しています。