(公社)生体制御学会第270回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました

平成26年6月1日(日) (公社)生体制御学会第270回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

(公社)生体制御学会第270回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)

10:00~10:50 臨床鍼灸医学研究
(公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「鍼灸医学の哲学について(道教)」
(公社)生体制御学会名誉会長
黒野 保三 先生

黒野保三名誉会長より鍼灸医師として、人間性を高めることの大切さを教えていただきました。
「私は小さい頃から何でも「国のため」と言って育てられてきました。個人の利益を追い求めるのではなく、国のため、人のために努力することが美徳とされてきました。日本臨床倫理学会理事長の新田國夫先生は『現在の社会に思いやり、共感はあるのか?現在は個人主義の傾向が強く、医療の中で特に倫理、思いやりの心が大切』であることを言っています。
倫理は哲学と深い結びつきがあり、個人の人生観、生き方になるものです。実際に実践することが大切であり、倫理を勉強しても人間性が良くなければ正しい倫理を実践することはできません。人間性とは哲学であり、利害を念頭に置く自分本位な考え方ではなく、感謝と謙虚な心を主体とした日本人としての生き様になります。
私たち鍼灸医師は学(知識)や術(技術)が高いことは大切になります。その上で最も大切なものは『道』、人間性になります。私たちが鍼灸治療をするときに、患者さんと話をしたりすることで安心され、信頼していただきます。この安らぎは鍼灸刺激の効果をより高めることになり、患者さんに信頼されるようになるために人間性を高める必要があります。
真の鍼灸医師は学・術・道すべてを磨き、それを特に意識をしなくても実践ができるようになるまで自己を磨かなければなりません。それには日常生活、考え方すべてを磨くことが必要になります。その時に最大の障害となるものは「うぬぼれ」であり、常に謙虚な心で足りないと思うことが大切となります。」ということを教えていただきました。

11:00~12:30 痛みの基礎
(公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「筋・筋膜性疼痛研究のこれまでとこれから」
名古屋大学環境医学研究所神経系分野Ⅱ助教                              
田口 徹  先生

田口先生に筋・筋膜性疼痛について教えていただきました。
「筋・筋膜性疼痛はfMRIでみると情動、記憶に関連する扁桃体や海馬が活性化しています。痛みのない人は普段、色々なことを考えていますが、強い疼痛患者さんは痛みのことしか考えることができないほどになっています。それが慢性化すると脳に変化が起こり、脳の大きさが小さくなり、中身がスカスカになってしまいます。また、痛みの原因がなくなっても痛みを感じるようになってしまいます。
筋・筋膜性疼痛を研究するにあたって①測定法がない、➁動物モデルがないという2つの問題点がありました。問題を解決するために、継続して研究を積み重ねることのできる高いレベルの研究ができるように工夫をしていきました。その結果、痛覚過敏を調べるためにラットにおいて運動をした群、何もしていない群で比較すると運動をした群の方が有意に痛みに対して過敏になっていました。また、ラットで高齢ラットと若年ラットで痛覚過敏を調べると、高齢ラットの方が過敏になったという結果になりました。
次に筋だけでなく、筋膜に痛覚線維が多くあるのか、という研究をしました。痛みを起こす物質であるCGRP、ペニフェリンが筋膜に多いことがわかりました。このことにより、筋だけでなく、筋膜が痛みの刺激を伝える重要な役割であることがわかりました。
線維筋痛症とは全身の痛みを主症状とする慢性難治性疼痛であり、自律神経失調、精神症状、感覚異常、運動機能低下などの症状があらわれます。日本では約200万人おり、男性よりも女性が7倍多く、中高年に多いという特徴があります。未だメカニズムが不明であり、決定的な治療法がありません。治療では、投薬療法、鍼灸などの物理療法、認知行動療法などがあります。現在、この原因を調べることで治療につなげる研究が行われています。」ということを教えていただきました。

13:30~14:20 疼痛疾患の基礎・臨床、診断と治療
「膝痛に対する臨床研究について」

(公社)生体制御学会広報部長
(公社)生体制御学会研究部疼痛疾患班班長
河瀬 美之 先生

今回は、本会の名誉会長である黒野保三先生の論文『鍼と超音波の併用による局所療法の鎮痛効果』の中のリウマチ性疼痛(膝痛)についての紹介と、(公社)全日本鍼灸学会三重大会で発表した『鍼灸院における腰痛・膝痛患者の実態調査』についてわかりやすいスライドを用いて詳細な説明がありました。
また、膝の疼痛をきたす主な疾患や鑑別ポイントについての説明がありました。

14:30~15:20 疼痛疾患に対する症例報告及び症例検討
「潰瘍性大腸炎に対する鍼治療の一症例」
(公社)生体制御学会総務副部長       
橋本 高史 先生

今回、10年間腹痛・血性下痢があり、点滴治療を受けるも再燃・寛解を繰り返した潰瘍性大腸炎患者に対し鍼治療を施したところ、腹痛・血性下痢が消失した症例について、スライドと資料に基づいて詳細に報告していただきました。
 

このマークのついている先生は東洋医学研究所®グループに所属しています。