(公社)生体制御学会第273回定例講習会に参加してきました。
(公社)生体制御学会第273回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)
9:30~10:20 基礎生理学
「痛みの基礎と臨床」
(公社)生体制御学会経理副部長
甲田 久士 先生
今日は痛みの受容器についてお話しをいただきました
「人の体をくまなく覆う皮膚は、成人でおよそ1.6m2の面積をもつ人体最大の器官になります。皮膚には熱さ、冷たさ、圧力、痛み、触覚の5つの感覚を感知する受容器があります。その5つの感覚は受容器がそれぞれ違っていて、痛みの受容器は自由神経末端が関与します。また、熱さ、冷たさも刺激が強すぎると痛みに変わり、自由神経末端が関与してきます。
刺激には侵害刺激と非侵害刺激があり、侵害刺激にはポリモーダル受容器が関与しています。ラットの下腿の筋肉を使ってポリモーダル受容器の機械刺激実験をすると、刺激を強くすればするほどポリモーダル受容器がよく働きますが、慣れの現象が起きてしまい、2回目からは反応が少なくなってしまいます。この実験によって20gの圧力が一番良い刺激であることがわかっています。
痛みは不快な感覚ですが、大切な感覚で体の組織損傷を避けるために役立つ生理的な適応反応になります。痛みの中で神経障害性疼痛が薬の効きにくい痛みになり、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、三叉神経痛、幻肢痛などがあります。その中でも有効な治療法は薬以外には神経ブロックが有効といわれています。」ということをお話し下さいました。
10:30~12:00痛みの基礎
(公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「痛み神経科学研究の新たな方向性」
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学分野病院准教授
杉浦 健之 先生
今回は、痛み神経科学研究の新たな方向性について教えていただきました
「脳の機能を非侵襲的に測定する方法として①脳波、➁脳磁図、➂PET、④fMRIがあります。最先端の科学では、この脳波を計測することで、思っただけで機械を動かすことができる機械が発明されています。
脳波と脳磁図は脳の表面的なものしかわかりませんが、fMRIは3次元でみることができるので脳のどの場所が働いているのかがわかります。
医療の世界にはプラセボ効果というものがあります。なにも効果のないものを痛みが楽になる薬だと言って飲んでもらうと痛みが楽になるという現象をいいます。『これで良くなる』と思っただけで本当に良くなってしまうのです。このプラセボ効果が起きているときはどこの脳が働いているのかをPETで調べたところ、プラセボ効果が強く出る人ほど側坐核の働きが活発になっていることがわかりました。側坐核は別名やる気スイッチといわれ、モチベーションを上げたり、心地良い感情に関わる脳の場所です。
プラセボ効果を臨床で使うコツとして、今からなんの治療をするのか教えずに治療するよりも、『今から痛みが楽になる治療をしますよ』と言って治療をしたほうが、プラセボ効果が加わってより治療効果が高まることがわかっています。逆に治療に対してネガティブであるとノセボ効果というものが加わって更によくない方にいってしまいます。例えば、薬の副作用に不安があればある人ほど薬の副作用が出やすいということがわかっており、これはノセボ効果によるものです。」ということをお話し下さいました。
13:00~13:50 疼痛疾患の基礎・臨床、診断と治療
「膝痛に対する徒手検査について」
(公社)生体制御学会広報部長
(公社)生体制御学会研究部疼痛疾患班班長
河瀬 美之 先生
「膝痛に対する徒手検査」について、「膝痛に対する徒手検査記録表」に基づいて、徒手検査の際の注意点などについて実技をまじえて詳細な説明がありました。
14:00~14:50 疼痛疾患に対する症例報告及び症例検討
「頭痛に対する鍼治療の一症例」
臨床鍼灸医学研究会会員
中村 覚 先生
今回は、頭痛の定義や原因、症状についての説明と、「頭痛に対する鍼治療の一症例」と題して、頭痛を主訴とした症例に対し鍼治療を施したところ、頭の痛みや肩のこりが消失した症例について、スライドと資料に基づいて詳細に報告していただきました。
このマークのついている先生は東洋医学研究所®グループに所属しています。