(公社)生体制御学会第275回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました

平成27年6月7日(日)(公社)生体制御学会第275回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。


(公社)生体制御学会第275回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)
 

9:45~9:55

第20回愛知県鍼灸生涯研修会開講式と、第19回(平成26年度)愛知県鍼灸生涯研修会における(公財)東洋療法研修試験財団発行の生涯研修終了証書の授与が行われました。

ご挨拶をされる(公社)生体制御学会会長の皆川宗徳先生
 
代表で生涯研修終了証書を授与される甲田久士先生

10:00~10:50 痛みの基礎 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
「膀胱機能に対する鍼刺激の効果」         
名古屋医健スポーツ専門学校鍼灸科学科長
(公社)生体制御学会理事
杉本 佳史 先生

今回は膀胱機能に対する鍼刺激の効果についてお話しをいただきました。
「頻尿や尿失禁などの下部尿路症状がみられる病気の1つに過活動性膀胱という病気があります。この病気の定義は、「尿意切迫を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば伴わないこともある」となっています。40歳代から年齢があがるごとに徐々に増えていき、40歳代においても12.4%、約810万人の人が罹っているといわれます。
膀胱の神経として、膀胱に蓄尿する働きの交感神経であるβ受容体は膀胱を広げて、α受容体は尿路にいく出口を締める役割をしています。排尿する働きの副交感神経であるムスカリン受容体・プリン受容体は膀胱を縮める働きがあります。
ラットを用いて鍼刺激により過活動膀胱の症状がよくなるのかを実験したところ、排尿閾値圧が仙骨部鍼刺激直後から有意な低下がみられて、過活動性膀胱の症状が良くなることがわかりました。そして、鍼刺激はプリン受容体に働いて過活動性膀胱が良くなることがわかりました。薬はムスカリン受容体に働いてこの病気の症状を改善しますが、ムスカリン受容体は全身にあるため副作用としてのどが乾く、便秘、消化不良などの症状がでることがあるので気をつける必要があります。」というお話をいただきました。

 

11:00~12:00 生理学トピックス
「日常生活と痛み」  
(公社)生体制御学会研究副部長 
甲田 久士 先生

今回は日常生活の中の痛みを中心にお話しいただきました。
「生理学のトピックスとして、第33回(公社)生体制御学会学術集会で講演される名古屋市立大学病院睡眠医療センター長の中山明峰先生は今年の1月6日、中日新聞に睡眠リズムが崩れた時の対処法として、
① 無理して寝ようとしない
② 頑張って起きる
③ 就寝の2時間前までに有酸素運動
④ お風呂はぬるめに
⑤ 朝は熱いシャワーとしっかり朝食をするように
とのご紹介がありました。
痛みは誰しも経験するものであり、身近なものです。よく聞かれる質問として、痛みは温めるのと冷やすのとどっちが良いのか?であります。対処法としては、怪我をしてすぐは患部に炎症を起こして熱を持ち、痛みがおきているので冷やす方が良く、長く続いている痛みは痛みの場所の血流量が減っているので、温めて血流量を上げることが大切になります。この長く続く痛みが問題であり、痛みは長く続くことで痛みが起こっている状態が普通になってしまい、治りにくい『可塑性』という状態になってしまいます。
痛みを感じる時にはブラジキニンという物質が分泌されています。研究によりこのブラジキニンはポリモーダル受容器を興奮させて痛みを脳に伝えることがわかっています。このブラジキニンは温度によっても反応の強さが変わり、ポリモーダル受容器を研究された熊澤孝朗先生らは30℃と36℃でブラジキニンの濃度を調べた結果、6℃の温度上昇により反応の増加がみられたことを報告しています。」というお話をいただきました。

13:00~13:50  循環器疾患の基礎・臨床、診断と治療
「血圧測定の意義」
(公社)生体制御学会副会長
(公社)生体制御学会研究部循環器疾患班班長
服部 輝男 先生
(公社)生体制御学会研究部循環器疾患班副班長 
加納 俊弘 先生

今回は、服部先生の経験談と、常日頃から血圧の測定・管理しておくことが重要であるとのお話があり、未経験者が実際に血圧測定しているところを指導して頂くなど、実技を交えての分かりやすい説明がありました。
引き続き、循環器疾患班副班長の加納俊弘先生より、スライドを使用して、歴史、血圧計の原理等を説明していただきました。


 

 

14:00~14:50 循環器疾患に対する症例報告及び症例検討
「高血圧症に対する鍼治療の検討」
(公社)生体制御学会広報部長 
河瀬 美之 先生

今回は、「高血圧症に対する鍼治療の一症例 ‐薬物療法を中止できた一症例‐」と題して、血圧が高く疲れやすいことを主訴に来院した患者に対し週2回の鍼治療を施したところ、血圧値が安定し、降圧剤も中止でき、疲れにくくなった症例に対して、一年間継続治療した経過について、資料に基づいて詳細に報告していただきました。

15:10~16:00 鍼灸学校学生向け企画 婦人科疾患の基礎と臨床
「婦人科領域における鍼灸総論」
明生鍼灸院院長
鈴木 裕明 先生

今回は鈴木裕明先生に鍼灸の未来について学生にわかりやすくお話していただきました。
「鍼灸師の実情は厳しく、収入の面からいっても平均年商300万~500万円と低いものです。1000万、2000万、1億と私は夢ではなく現実にできると思います。そのためにはどうしたらいいのでしょうか。
私は若い頃、黒野保三先生に『自分の専門を見つけなさい』と教えていただきました。しかし、5年たっても見つけることはできませんでした。臨床で偶然かもわかりませんが、不妊の方を3人ほど出産まで導くことができました。いい過ぎではないと思いますが、その方の人生を変えることができた。これほど嬉しいことはありません。勉強は嫌いでしたが、婦人科疾患を勉強することは特に苦になることなく楽しくできたので、黒野保三先生に『私は不妊を専門にしてやっていきたいと思います』とお伝えできました。現在まで治療をして、専門性の大切さが身にしみて理解することができて、これまで培ってきたことを未来に託したい。そう思って今は弟子を育てています。これからの鍼灸を担う学生が専門性をもって、臨床で活かすための研究をしてくれることを願っています。」いうお話をいただきました。

このマークのついている先生は東洋医学研究所®グループに所属しています。