デトックスと免疫力 東洋医学研究所®グループ  海沼鍼灸院 院長 海沼 英祐 平成30年9月1日号

はじめに
2017年2月のコラムで、腸内環境と免疫力の関係について書かせて頂きました。腸内環境が整っていると、腸内細菌の活動が活発になり、人体の免疫細胞の活動も活性化されることが分かって頂けたと思います。今回は、体内の有毒物質や老廃物を排泄するデトックスの視点から、腸内環境の重要性と免疫力について考えてみたいと思います。

デトックスについて
デトックスは、解毒という意味です。体に蓄積すると害を及ぼす重金属や化学物質だけでなく、老廃物や体脂肪までスッキリ排泄させて健康を取り戻そうとする方法です。
近年、汗をかいてもデトックスされないという研究報告が海外の研究者から発表されました。その報告によると、どんなに大量の汗をかいたとしても体内に取り込んだ汚染物質の1%すら排出されないという結果でした。そのことから、デトックスは、ほとんどが排尿・排便によって行われていることが分かりました。水に溶ける毒素は尿によって、水に溶けない毒素は便となって排泄されます。その内、排尿によってのデトックスの割合は20%程で、排便によっての割合は75%以上を占めると言われています。そのため、腸内環境を整えて便通を良くしておくことが大切なことが分かります。デトックスの要は腸だと言っても過言ではないでしょう。

腸内環境の悪化がもたらす影響
それでは、便通が悪くなって老廃物が腸内に蓄積して腸内細菌叢が乱れると体にとってどのような害が起こるのでしょうか。
1) 肥満しやすくなる
2) ストレスに弱くなり、うつや不安症にも
3) 糖尿病や心疾患のリスクアップ
4) 子供の成長やメンタル面に影響
5) 大腸がん、肝臓がんのリスクアップ
6) アレルギーが起きやすくなる
7) 病原菌などに感染しやすくなる
(日経ヘルス2016年11号より抜粋)
上記のように、腸内環境の悪化による体への害についての研究報告が数多くあります。この事からも、腸内環境を良い状態に保つことの重要性が伺えます。

腸内環境を整えて免疫力を上げよう
腸内環境を整えるには、食物繊維が欠かせません。食物繊維は便通を良くするだけでなく、腸に住む有用菌の餌になります。これらの菌が作り出す物質がエネルギー代謝や血糖のコントロールに関わっていることや、腸内にいる免疫細胞を刺激して免疫力を高めていることがわかってきました。食物繊維を毎日しっかり取ることによって、糖尿病や癌での死亡率が減少することや、脳卒中の発症率が減少する研究報告も出てきています。
もう一つ、腸内環境を整える方法として断食や少食(カロリー制限)があります。過食は体にとって毒であり、そのデトックス法として断食・少食があります。断食・少食には、様々な病気のリスクを下げ、健康と寿命の延長に役立つという研究報告が数多くあります。
このように、腸内環境を整えることによって病気になりにくくなり、また、病気を治す力も向上することがわかってきました。

おわりに
今回、「デトックスと免疫力」というテーマで、デトックスの重要性や腸内環境と免疫力の関係、腸内環境を整える方法についてお話しさせて頂きました。
腸の不調が、メンタル面をはじめ、アレルギーや様々な病気の原因になっていることが研究報告によって明らかとなってきています。食物繊維をしっかり取ることや、断食・少食によるデトックスの力を上げることで、腸内環境が整い、病気を治し健康な体を維持する免疫力も向上します。また、鍼治療を受けられた人の中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが、鍼治療の直後から腸が動き出すのがわかるほど、腸の動きが活発になる人もいます。それぐらい、鍼治療は胃腸の活動を促進します。それもまた、便通を促しデトックスへと繋がります。
食生活の見直しと鍼治療を併用して、デトックスによる免疫力を高め、より健康で充実した日々を手に入れて頂きたいものです。

引用文献
・NATIONAL GEOGRAPHIC
natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/041200164/・日経電子版 「デトックスにブーム再来?科学的根拠が後押し」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO12484490T00C17A2000000
・日経ヘルス2016年11号