食べる順番は野菜からQ&A 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸院 院長 山田 篤 令和元年12月1日号

東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸院 院長 山田 篤
〇よくある質問にお答えします
「食べる順番は野菜から(ベジタブルファースト)」という食べ方が浸透してきています(過去のコラムでも紹介しています)。この食べ方により、食後の急激な血糖値の上昇(血糖スパイク)を穏やかにすることで、良好な血糖コントロールが期待でき、効果を実感されている方も多いと思われます。
今回は「食べる順番は野菜から」についてよくある質問にお答えします。

〇どれだけ野菜を食べればいいのか?
「野菜を最初から食べるのはわかるけれど、どれだけの量を食べたら効果が出るの?」というご質問をよく頂きます。どれだけの量、という明確な答えはありませんが、ヒントはあります。
2016年の長崎女子短期大学紀要「食事の摂取順序による血糖値の影響(古賀克彦先生)」の報告1)の一つに、「白飯を摂取する前に摂取するサラダの量を変更した場合の血糖値の影響」があります。健常な女子大生(19~20歳)4名にレタス・トマト・キュウリ・キャベツにドレッシングを加えたサラダを、 ①サラダ150g→白飯150g 、②サラダ50g→白飯150g、 ③白飯150gのみの3パターンにおける食事摂取の順番についての血糖値の推移の調査を実施した結果はグラフAの通りになりました。

グラフA:白飯を摂取する前に摂取するサラダの量を変更した場合の血糖値推移
(長崎女子短期大学紀要 食事の摂取順序による血糖値の影響より改変)

ポイントは②のサラダ50gを摂取した場合は、③のサラダを摂取しない場合と同様に血糖値上昇は抑制されなかったことです。このことから、ある程度の食物繊維を摂取しないと食後の血糖値上昇抑制効果を得ることはできないことがわかります。
参考に、コンビニやスーパーでの袋入り千切キャベツが約100~150g、もやし1袋が約200gです。野菜の種類にもよりますが、なるべく沢山食べましょう。

〇野菜だけの料理はまずないのです
「大概の料理は肉など混ざっていて、野菜から食べることが難しい。一緒に食べてはいけないのでしょうか?」この質問もよくあります。
私自身も疑問に思っていたので持続血糖測定器を装着して試してみました。スーパーで売っている袋に入った野菜炒め用の野菜と豚肉小間切れMサイズを2つずつ買ってきて、野菜と肉を別々に炒めた①野菜炒め→肉→玄米、野菜と肉を一緒に炒めた②肉野菜炒め→玄米 の2パターンにおける食べる順番による血糖値の推移を調査しました。結果はグラフBです。

グラフB:野菜炒め→肉 vs 肉野菜炒め 血糖値推移

①の野菜と肉別々に炒めた方よりも、②の肉野菜炒めの方が血糖値上昇抑制効果は強いことがわかります。海外の似たような文献2)にも同様の結果になった報告があります。
このことから読み取れるのは、確かに食物繊維による血糖値上昇抑制効果はあります。しかし、肉や魚などの脂質やたんぱく質摂取による胃内滞留時間による血糖値上昇抑制効果の方が食物繊維よりも高いことを示しています。

〇食べる順番は最後に炭水化物!
2つの質問から食べる順番による血糖値上昇抑制効果を得るためには、野菜をたくさん食べること、肉や野菜も野菜と同様に最初から食べても可、ということになりますので、炭水化物を最後に食べること以外は食べる順番を気にしなくてもよいと考えています。
ただし、このことは食後の血糖値上昇抑制効果のお話です。大量の脂質や高カロリーの食事を続けていると生活習慣病や心不全、脳血管障害を引き起こす確率が上がりますのでご注意下さい。
運動や睡眠などの生活習慣と併せて、バランスの良い食事で楽しく生活していきましょう。

文献
1)古賀克彦.食事の摂取順序による血糖値への影響.長崎女子短期大学紀要.第40号.2016.70-4.
2)Shukla AP, Andono J, Touhamy SH, et alCarbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetesBMJ Open Diabetes Research and Care 2017;5:e000440. doi: 10.1136/ bmjdrc-2017-000440.