アレルギーマーチ(2)食物アレルギー 東洋医学研究所® 主任 橋本 高史 令和2年7月1日号
はじめに
近年ますます増加傾向にあるアレルギー疾患は、低年齢児にも及んでいます。最も低年齢で起こりやすいとされる食物アレルギーは皮膚や呼吸器、消化器や全身にアレルギー症状が出やすい疾患でもあります。
今回は、アトピー素因を持って生まれた子供が成長と共に臓器・病態を変えながら様々なアレルギー疾患を発症していく「アレルギーマーチ」の中の「食物アレルギー」についてお話させて頂きます。
アレルギーマーチとは
アレルギーマーチとはアトピー素因のある小児にアレルギー疾患が次から次へと発症してしまい、年齢とともに、症状が変化していくことを言います。
実際には、親から遺伝によってアレルギーになりやすい体質を受け継いだ子供が、食物アレルギーから発症し、アトピー性皮膚炎→気管支喘息→アレルギー性鼻炎・結膜炎と、乳児期から学童期へと年齢とともに疾患が変化していく様子を行進(マーチ)に例えて呼んだものです。
食物アレルギーの原因食物と主症状
食物アレルギーの原因となる食べ物は、乳児では鶏卵が最も多く、牛乳、小麦の3つが三大原因と言われています。食生活の幅が広がる幼児期以降では、魚卵(いくらなど)やピーナッツ、果物、そば、甲殻類(海老や蟹)などの食物アレルギーも報告されており、原因食物の種類は多岐にわたります。
元々アトピー素因のある小児が原因となる食べ物を食べて主に2時間以内にかゆみ、蕁麻疹といった皮膚症状、目・鼻・口に現れる粘膜症状、咳や喉の異常等の呼吸器症状、下痢・嘔吐といった消化器症状、場合によっては全身性のアナフィラキシーショック(血圧低下や意識障害)が現れるものです(表)。
見逃されやすい食物
見逃されやすい食物として、母乳が挙げられます。新生児で起こりやすい疾患であり、新生児・乳児消化管アレルギーと呼ばれています。新生児・乳児消化管アレルギーは、最近次第に認識が広まりつつある疾患です。ミルクアレルギーとも呼ばれますが、ミルクアレルギーは成分により牛乳アレルギー、母乳アレルギー、大豆乳アレルギーに分けることができます。牛乳アレルギーが最も多く、ミルクアレルギーの大半を占めています。
主症状が、嘔吐、血便、下痢などの消化管症状で、発症時期が早いことも特徴であり、牛乳アレルギーの場合はほとんどが新生児期に発症します。これまでに知られているアレルギー疾患の中では最も早く発生するものです。そして蕁麻疹などの皮膚症状はみられないのも特徴です。
小さい子をお持ちの親御さんは知っておくべき疾患であると思います。
食物アレルギーの対策
基本的には原因食物を回避することが治療の中心になります。症状が軽微でも繰り返しの摂取で重篤になることもあるので注意が必要です。
また基礎体力をつけるべく運動を心がけて下さい。健康的な食生活を心がけること、しっかりと睡眠をとることも重要です。
しかし、アレルギー疾患の発症にはさまざまな要因があり、生活の中からそのすべてをとり除くことは非常に困難です。またアレルギー疾患の発症には小児自身の心の要因も関係していることから、アレルゲンの除去は必ずしも発症予防につながるわけではありません。アレルギー疾患の発症にできるだけ早く気づくことと、適切な治療と管理により症状をコントロールしていく事が重要です。
また一方では、心身が大きく変化することで、成長によってアレルギー疾患が自然寛解することもありますし、新生児の消化器症状は1歳頃までに耐性を獲得する例も多くあります。
アレルギー疾患と小児に対する鍼治療
東洋医学研究所