局所療法としての鍼治療の研究・・・疼痛疾患に対する鍼治療
鍼治療では生体制御療法と並び局所療法も有効な治療法であります。特に症状に対する局所療法は疼痛疾患(痛みを伴う疾患)に多用されるもので、1回の鍼治療で効果をあげる事ができる場合もあります。現在、臨床で簡便に測定・評価する痛みのスケールには様々なものがありますが、これはあくまでも個人的で主観的な感覚をスケールに表現するものであるため、痛みの程度を正確に測定するには大変難しいものがあります。
先に述べた鍼と超音波の併用治療の文献では痛みの程度を測定していませんでした。30年以上前の文献としては効果判定があり、大変優れたものでありました。そこで現在、腰痛に対する鍼治療の実証医学的研究の試みに取り組んでおり、ここでは痛みの程度を評価するスケールとしてVAS(Visual Analogue Scale)と腰痛の程度を評価するスケールとして日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)を使用して検討していますので途中ですが紹介します。
平成12年5月より平成13年7月の期間に東洋医学研究所ョと東洋医学研究所ョグループの7治療院に来院した初診患者のうち、主訴が腰痛であった患者41例を対象とした。この患者に対し鍼治療(局所療法:腎兪と委中の低周波痛電置鍼術)を行いVASとJOAスコアを使用して経過を観察し、初診時と最終治療終了時との差を医学統計処理を行い検討しました。
その結果JOAスコアによる重症度判定では初診時に軽症13例(32%)、中等症25例(61%)、重症3例(7%)であったものが、最終時には軽症28例(78%)、中等症8例(22%)、重症0例となりました。また、効果判定では著効5例(12%)、有効15例(37%)、やや有効18例(44%)、無効3例(7%)となり、やや有効以上を効果ありとすると93%に効果があったことがわかります。JOAスコア点数の推移では初診時平均17.9点であったものが最終時には22.8点となり、有意な改善が認められました。VASにおいても初診時治療前と初診時治療後では有意な差が認められました。また、初診時治療前と最終時治療前でも有意な差が認められました。
痛みを伴う疾患は多数あり、その中で最も多いものが腰痛であります。今回は腰痛に対する鍼治療の有効性を実証医学研究に基づいた手法により検討し、その有効性を見い出すことができました。
今後は膝痛や頚肩腕痛等の運動器疾患はもちろんのこと、内科系からくる痛みについての検討も含めて行う予定であります。