尾北歯科医師会の講演会

平成20年5月24日、愛知県江南市北野町において尾北歯科医師会主催の講演会が開催されました。
この講演会の講師として依頼を受け、東洋医学研究所®所長 黒野保三先生が「歯科領域における鍼治療の応用について」と題して講演されました。


講演される東洋医学研究所®所長の黒野保三先生

日 時   平成20年5月月24日(土)午後8時~午後9時30分
場 所   江南市民文化会館
参加者   尾北歯科医師会会員
テーマ   『歯科領域における鍼治療の応用について』
講 師   東洋医学研究所® 所長 黒野 保三 先生


司会をされた尾北歯科医師会の高田明昇先生


実技風景
講演後には鍼治療の体験が行なわれました。

歯科領域と黒野保三先生との関わりは長く、1973年に第20回日本鍼灸学会が名古屋大学豊田講堂において開催され、戦後初めて中国医師団を日本に招き、鍼麻酔の特別講演やシンポジウムが行われたことについてお話がありました。その後、鍼灸ブームが起こり、黒野保三先生は岐阜大学の佐野節夫先生や愛知学院大学の小長谷九一郎先生や北山誠二先生らと抜歯の鍼麻酔の実験を行ったのですが、結果として麻酔の効果の確率が低かったことから、すべての患者に対して用いることが出来ないことが明らかになったとのお話がありました。 その後、1983年には歯科開業医の日本歯科医師東洋医学会が設立され、現在に至るという経緯についてお話がありました。

歯科領域は、口腔という部分に限定した医療でありますが、80歳で20本の歯を目標に掲げるなど、歯とアンチエイジングが深い関わりがあります。現在、鍼灸治療によるアンチエイジングは期待されており、また唾液が出ないという口腔乾燥症などの疾患には鍼灸での治療効果も期待され、アンチエイジングだけではなく心身一如という面から考えると、歯科と鍼灸治療は非常に深い関係があるというお話がありました。

続いて、本当の鍼灸治療とはどのような医療であるのかと云うテーマに移り、日本の鍼灸の歴史やその後の鍼灸界の経過、鍼灸師の現状、大学医学部で行われている東洋医学のカリキュラム、政治的な統合医療の動きについて詳細な説明がありました。
 
本当の鍼治療を行うための原理原則を確立すべく、過去に黒野保三先生は経穴の定量化ならびに経穴に対する鍼の刺激量に関する研究を行い、その結果を示されてきました。良い鍼刺激を行った場合の鍼刺入時の生体の生理学的・免疫学的現象をイラストを用いての説明があり、黒野保三先生が1980年~1988年に行った免疫の研究についてのお話もされました。

臨床でみられる不定愁訴や糖尿病、痛みなどに対する鍼治療の臨床研究の結果について提示があり、黒野式全身調整基本穴を用いた太極療法とはどのような治療法であるのか、また太極療法によって活性化される統合的制御機構についてのお話がありました。

最後に鍼灸治療の歯科領域における応用として、鍼麻酔による抜歯の研究で用いられた経穴(合谷、下関)と、その実験方法について説明がありました。