(公社)生体制御学会第292回定例講習会に参加してきました

平成30年10月7日(日)(公社)生体制御学会第292回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

(公社)生体制御学会第292回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)

9:30~12:00 基礎生理学 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
愛知医科大学医学部生理学講座教授
岩瀬 敏 先生
今日は脳神経の基礎について御講義頂きました。
「第Ⅱ脳神経は視神経になります。目から入った情報は脳に伝わるまでに交叉します。つまり、右目から入った情報は左側の脳の後頭葉へ、左目から入った情報は右側の脳の後頭葉へ情報が伝わります。このことは重要で、特に脳の病がどこにあるのか推測する時に役立ちます。
視交叉上核は、生物時計の働きに重要な場所で、人間は基本的に25時間の生物リズムをもっていますが、視交叉上核の働きにより、24時間のサイクルに調節されています。
暗順応とは、明るい環境から暗い環境へ急に変化したときに、最初は何も見えないが、徐々に暗さに慣れて見えるようになることを言います。これは、動物の自律機能の1つであり、光量が多いときは錐体が働き、光量が少なくなると桿体が働くようになることからおこります。暗順応は早い人で2・3分で、遅い人で20分くらいかかります。
視野は目に見える範囲であり、正常な人で左右120度あります。馬など両目が顔の左右についている動物は、180~200度と視野が広いですが、立体的に見る能力は低いと言われています。
第Ⅲ脳神経は動眼神経、第Ⅳ脳神経は滑車神経、第Ⅵ脳神経は外転神経であり、この3つの脳神経は眼球運動を司ります。動眼神経は上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋、滑車神経は上斜筋、外転神経は外直筋を司っています。
第Ⅴ脳神経である三叉神経は一番太い神経であり、主に顔面の知覚を司っています。その中の下顎神経は、咬筋と側頭筋の動きを支配しています。」と御講義頂きました。

13:00~13:50  
生活習慣病の基礎・臨床、診断と治療 
(公社)生体制御学会研究部生活習慣病斑班長
(公社)生体制御学会理事
山田 篤 先生
今回は「糖尿病について7」と題して御講義頂きました。
前回までの復習で、「糖尿病治療の目標について」をお話された後、運動療法の目的や効果、運動の強度(有酸素運動やレジスタンス運動)について詳しい御説明がありました。食事療法については膵臓の負担を軽くするために毎日の食事量から必要なカロリーを計算しながら、その範囲内で食事を楽しむことと、食事の際にはまず野菜から食べることが重要であるということについて、スライドを用いて詳細に御講義頂きました。

14:00~14:50 生活習慣病に対する症例報告及び症例検討
「糖尿病の鍼灸治療」
三陰三陽塾鍼和会相談役
林 﨨一 先生
今回は「糖尿病の鍼灸単独治療の一症例について」と題して、HbA1cの数値を知るために病院には行くものの服薬治療はせずに鍼灸治療のみで糖尿病を改善したいと訴えた症例について、東洋医学的な視点から臨床の経験も踏まえてご報告頂きました。

15:00~16:00 鍼灸学校学生向け企画 スポーツ傷害に対する鍼治療
「スポーツ傷害治療に必要なその他のテクニック」
早川治療院 院長
早川 和浩 先生
 「スポーツによる怪我には鍼灸治療以外にもアプローチ方法はあります。もちろんスポーツ傷害に対する鍼治療として、捻挫や肉離れ、打撲など、急性期に対しても私の経験的には鍼治療は有効ですし、野球肘やランナー膝、腰痛分離症などのオーバーユース症候群にも有効です。その他のアプローチとして、スポーツマッサージやテーピングなども有効です。スポーツ分子栄養学について学ぶことも大事であると思います。また、【スポーツリコンデショニング】として怪我をした後に痛みを取り除き練習や競技に復帰するためのリハビリや、再発しないように体を整えたり体を作る事を目的としています。
私が持っている資格であるアスレチックトレーナーですが、日本では国家資格ではなくセカンドライセンスといってよいです。ですから鍼灸師として治療ができるようになり、その他のアプローチもできるようにするのが良いと思います」と経験談から御講義頂きました。

16:10~17:00 
名古屋市立大学睡眠医療センター認定 睡眠育成士認定講座(3)
「睡眠の基礎と臨床」      
名古屋市立大学睡眠医療センター・臨床検査技師
安東カヨコ  バールドワジ先生

今回は睡眠時無呼吸症候群について御講義頂きました。
「睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に十分な休息が取れず、結果的に昼間眠気に襲われる事になります。症状はいびきと傾眠の2点であり、中高年の肥満男性に多発するものだと考えられていましたが、原因には肥満の他に、東洋人の場合は顔面の骨格も影響しています。下顎が小さい人や顎のほっそりして口腔内の狭い人、舌が分厚く皮下脂肪が多い人は中年男性に限らず小児や女性にも当てはまります。合併症として高血圧や気分障害、冠動脈疾患や心不全、心房細動などがあり、注意が必要です。
睡眠の検査として、PSG(睡眠ポリグラフ検査)とOCST(携帯用睡眠時無呼吸検査装置)があります。PSGは脳波、顎筋電図、眼球運動、呼吸運動、動脈血酸素飽和度、心電図などを終夜にわたり同時に記録し、睡眠と覚醒の区別や睡眠の質と量を評価します。数値の信頼性は高いですが、入院する必要があり費用もかかります。OCSTの検査は簡便であり、入院も不要です。検査でわかる疾患としてはPSGは睡眠障害全般にわたりますが、OCSTは睡眠時無呼吸症候群のみになります。簡単に調べたいのであればOCSTで良いですが、詳しく調べるならばPSGをお勧めします。
治療はCPAPを用います。CPAPは元々人工呼吸器の管理の回復期・離脱期に使用されており、一方的に空気を送り出す(陽圧)ものです。睡眠中に装着し、自動装置に任せて無呼吸のパターンに応じて圧を変えて呼吸を管理します。使用時間が4時間以上で使用率が70%であれば良好です。
外科的治療としては鼻腔の形成手術や口蓋扁桃摘出手術、下顎を延長する手術などがあります。他にマウスピースも有効です」と御講義頂きました。

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