お天気と体の関係(2) 東洋医学研究所®グループ  かどむら鍼灸院 院長 角村 幸治 平成29年7月1日号

「天気が悪くなるときに体がだるい」「天気が悪くなるときに頭痛がする」「天気が悪くなるときに持病のリウマチが痛い」など、天気と体の関係については身近に体験したり、聞くことあります。前回の話では、この天気が悪くなるときに体の調子が悪くなる人は、東洋医学研究所®、東洋医学研究所®グループの鍼灸院に来院した1013人中320人と約3人に1人の方でした。また、この方々はめまい、頭痛、胃腸症状、だるさ、精神症状、肩こり、腰痛など様々な症状が出やすいことを書きました。
私達が研究している東洋医学の古典「黄帝内経素問」の中には、天気と体の関係について多くの記載があります。たとえば、「上古天真論篇第一」には「虚邪賊風、これを避くるに時あり、精神内に守る、病いずくんぞ従い来らんや(外界の気象の変化に注意して回避する時に回避し、精神を守れば、病が襲うというようなことがあろうか)」という記載があり、気象が体・精神に深く関与していることが書かれています。
この天気と体の関係を研究する分野を生気象学といいます。気象といっても天気、気圧、温度、台風、季節の変化や月の満ち欠けなどいろいろな要素があります。
前回は気象が悪くなると体の調子が悪くなることを書きましたが、今回は、いろいろな気象要素が体に影響する中でわかってきていることを紹介したいと思います。
奥間先生によると、1013hPa(ヘクトパスカル)という標準的な気圧に比べて、それよりも6から10hPa減少、つまり気圧が低くなった時に、片頭痛発作が起きやすいことを報告しています。
また、気圧と体の関係については研究が進んでおり、佐藤純先生の報告では、慢性的な痛みは気圧が低くなると強くなるということを動物実験で証明しています。痛みをもっているラットに対して、27hPa気圧を低下させたところ、痛みが強くなりました。27hPaは台風などでおこりうる気圧低下です。また、1時間に5hPaという比較的ゆっくりした前線通過に伴う程度の大気圧の変化によっても痛みが強くなることも報告しています。
また、痛みだけでなく、気圧の変化は精神的にも影響を及ぼすことを佐藤純先生は報告しています。ラットを用いて大気圧よりも20hPa低い環境でうつ様行動がどうなるのかを調べたところ、大気圧環境下よりもうつ様行動を多くすることがわかりました。この実験は天気悪化(ここでは気圧低下)が人のうつ病の発症頻度を高めること、あるいは悪天候でうつ症状が悪化することをはじめて動物実験した報告です。
このように気圧低下で痛みが強くなることや精神的に悪化することは、自律神経が深く関わっていることを佐藤純先生は述べています。
黒野保三先生の長年の研究により、鍼治療により自律神経が整うことがわかってきています。気象の変化で体の調子が悪くなる方は鍼治療を試してはいかがでしょうか。

 

引用・参考文献
・石田秀美.現代語訳 黄帝内経素問.東洋学術出版社.序文.2006.
・Hirohisa Okuma, Yumiko Okuma and Yasuhisa Kitagawa.Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine.SpringerPlus .2015.
・佐藤純、溝口博之、深谷佳乃子.天候変化と気分障害.日本生気象学会誌.48(1)3-7.2011.   
・Kurono Y, Minagawa M, Ishigami T, Yamada A, Kakamu T, Hayano J. Acupuncture to Danzhong but not to Zhongting increases the cardiac vagal component of heart rate variability. Autonomic Neuroscience:26(1・2).2011:116-20..