健康寿命と更年期 東洋医学研究所®グループ  たかやま鍼灸院 院長 高山 加奈子 平成29年9月1日号

はじめに
日本の女性の寿命は87歳と大変長寿になりましたが、残念ながら人の手を借りなければならない生活が10年以上もあるというのが現実です。
最近よく耳にする健康寿命の定義は「健康上の問題がなく、介護の必要がない自立した生活が送れる期間」のことだと言われています。
いくら平均寿命が延びても、健康寿命が低くては質の高い生活とは言えません。
そこで、女性の健康寿命を延ばすにはどうしたらよいのでしょうか?そのためには、更年期の過ごし方が重要になります。今回は、更年期とは、そもそも何なのかということを確認していきたいと思います。
 
なぜ女性の方が長生きするのでしょうか?
日本だけでなく世界的に見ても女性の方が長生きです。
その理由について、沢井製薬のメディア「サワイ健康推進課」では以下の3つを挙げています。
1.女性ホルモンのエストロゲンが血圧を下げたり、悪玉コレステロールの血中濃度を下げる働きがあるため
2.基礎代謝量が女性の方が少なく、少ないエネルギーで生きていける。つまり環境の変化に適応しやすいため
3.健康意識が女性の方が高いため

女性ホルモンが長寿に一役かっていることはわかりました。それでは、女性ホルモンの恩恵を受けられなくなったら、どうなるのでしょう。今までのような「健康で当たり前」というわけにはいきません。更年期から更年期以降の生活が健康寿命を左右する鍵を握っているのです。

更年期とは
更年期は思春期などと同様に、女性のライフサイクルのなかの一時期の呼び方です。
更年期とは、閉経をはさむ前後10年ほどの期間のことをいいます。
日本女性の平均的な閉経年齢は、50歳前後と言われていますので、おおむね45~55歳が更年期と呼ばれる時期になります。
閉経に伴い卵巣の機能が低下し、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が急激に減ってくることが原因で体内のホルモンバランスが崩れ、自律神経が乱れることにより様々な症状が現われてきます。
更年期は女性をとりまく環境や人間関係が変化する時期でもあり、子育て、仕事、親の介護、夫婦関係などストレスによるものも大きく影響しています。更年期の症状は個人差が大きく、日常生活にまで影響を及ぼす場合を更年期障害といいます。

更年期症状は
月経/生理不順・不正出血、イライラ・怒りっぽい、物忘れ・記憶力低下、疲労感・倦怠感・無気力、不安・気分の落ち込み・うつ、動悸・息切れ、のぼせ・ほてり・多汗、頭痛・頭重感、手足や腰の冷え、むくみ、めまい・耳鳴り、寝付きが悪い・不眠、肩こり・腰痛、手足のしびれ、関節痛、頻尿・尿もれ、ドライマウス・口臭、白髪・細毛・薄毛、皮膚の乾燥・かゆみ、眼精疲労・老眼・ドライアイ、肥満・高コレステロール、便秘・下痢、食欲不振などです。

これでもかというくらいに多種多様な症状があります。こんなにあったのではたまったものではありません。ただ、症状は一定しておらず、症状の出方にも波があります。病院の検査では原因や病気は特に見当たりません。いわゆる不定愁訴といわれてしまうのが、更年期の症状の大きな特徴といえます。

更年期をどう乗り越えるのか
女性ホルモンの減少は女性なら誰もが経験する自然な変化です。更年期症状・更年期障害のピークは平均で2~3年、長くても5年ほどで治まるといわれています。
自律神経の乱れを穏やかにする生活習慣やセルフケアを実践するとともに鍼治療をしていくことで辛い症状が徐々に緩和されていきます。
鍼治療には、自律神経の乱れを整える働きがあります。内臓の働きを整えたり、血圧を整えることが科学的に証明されています(東洋医学研究所®HP:研究業績参照)。体の細部にわたって、血液等の流れを促進して疲労の早期回復、各細胞への酸素や栄養分の供給を良くする働きがあることも解明されています。更年期が終わったからといって、誰もがすっきり快調になるとは限りません。定期的に鍼治療をして体調を整えていくことをおすすめします。

おわりに
更年期以降の30年以上もの時間を健康で過ごせるかは大きな課題です。更年期を一つのきっかけに、自分の体の状態を見直してみませんか。
不調の原因が女性ホルモンの減少だけでなく、生活習慣にあると気付くはずです。
「習慣」ほど大きく影響するものはありません。まずは、規則正しい生活を習慣化できるようにしていきましょう。

参考引用文献
・ 浜中聡子:アフター更年期からの不調を治す50の習慣.主婦の友社
・ 日本女性医学学会編:女性医学ガイドブック 更年期医療編2014年度版.
金原出版株式会社
・ 厚生労働省HP:健康日本21(第二次)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html

平均寿命と健康寿命の差
※ 当データは2013年時点でのものになります