太らないようにするには -食欲を調整しよう- 東洋医学研究所®グループ  二葉鍼灸療院 令和2年2月1日号院長 河瀬 美之 

はじめに
ダイエット・・、永遠のテーマですね。これは健康管理、維持には大変重要な課題です。適度に運動して、食生活を見直し、規則正しい生活(食事時間や睡眠時間を一定にするなど)をすることがダイエットの基本だということは、誰しもおわかりのことと思います。
好きな物を好きなだけ食べることを繰り返すと簡単に太ってしまう人は、食欲をぐっとこらえて自粛されることと思いますが、この余分な食欲をコントロールできれば悲しい思いをしなくてもいいのではないでしょうか?今回はこのことについてちょっとした行動で抑えることができることについて述べてみたいと思います。

「早寝早起き朝ごはん」が基本
食欲をコントロールする部分は脳の深部にある視床下部という場所で、ここは自律神経やホルモンを分泌する生命維持には欠かせない重要な場所です。
人間の生体内時計は24時間よりもやや長めに設定されていますので、これをリセットするには、朝起きて目の網膜に太陽の光を届けてあげることです。ある程度一定時間に起きて太陽の光をみることで生体内時計がリセットされると、自律神経やホルモンに1日の始まりを伝え、身体の活動が始まります。
したがいまして、生体内時計機能が狂うと脳の視床下部も混乱し、食欲にも悪影響を及ぼして暴飲暴食の原因となってきます。
もう一つリセットに欠かせないものは朝食です。食事を摂ることで胃腸や肝臓、膵臓、腎臓といった末梢の体内時計が調整されるという報告がされています。朝と昼は血糖値を下げるインスリンというホルモンがたくさん出ますので、朝食をしっかり食べても問題ありません。ところが、夜はインスリン分泌量は少なくなるので、1日の中で夕食が主体の献立ですと生活習慣病のリスクが高まりますし、夜は動かないのでエネルギーが使われないので太りやすくなります。
朝の起床時に光を浴びて体内時計をリセットし、2時間以内に朝食を摂り、末梢時計をリセットしてあげて下さい。

食欲をコントロールするには
1)ごはん食は腹持ちが良い
朝食にごはん食(和食)とパン食(洋食)を摂らせて満腹感を比較するとごはん食の方が満腹感が得られました。昼食も同様でありました。満腹感が持続するということは、次の食事での食べ過ぎが減るということにつながります。
2)適度な運動をしている日の方が食欲が少ない
仕事がお休みの日、家でゴロゴロしていてもお腹が減ってくるという経験があると思います。野生動物は敵がいなくて安全な場所に食べ物を持って行った時に食欲を強く感じ、ゆっくり食事をするという習慣があります。人間も同じです。
したがいまして、ゆったりする時間があってもいいのですが、適度に身体を動かした方が食欲がコントロールされるのです。
3)運動によって食欲がコントロールされる程度が男女で違う
運動によって食欲が低下する報告がありますが、女性は男性よりも食欲の低下が少ない傾向にあります。これは、妊娠・出産のためにエネルギー確保をすると考えられています。
4)糖質によって満腹感が得られる
糖質を摂取後、食欲を上げるグレリンというホルモンが約1時間後に最低レベルに低下し、それから2時間持続するという結果が報告されています。
脂質よりもたんぱく質、たんぱく質よりも糖質の方が満腹感が得られので、糖質を必要以上に抜かない方がいいということになります。
5)ベジタブルファーストが食欲に影響するのか?
野菜を先に食べると糖質の吸収が抑えられてインスリン分泌量が緩やかになるので、糖尿病コントロールの一助になることが知られています。しかし、糖質の吸収が抑えられると食欲は旺盛のままです。
そこで、たんぱく質を先にとって食欲を抑え、そして糖質、野菜を摂っていく方が食べ過ぎにならないという理屈です。ただし、糖尿病の人には糖質は最後にした方が無難です。
6)朝食にたんぱく質を摂った方が子供には効果的
朝食からたんぱく質を摂っているグループの子供は摂らないグループの子供より総じて成績が良く、体力も高かった。特に和食でたんぱく質を摂っている子供達は成績、体力、メンタルのいくつかの項目が特に優れていたという結果が得られたことから、和食の重要性が確認されました。
7)思い込みによって食欲が変化する
中身が同じミルクシェイクであっても、一つは「高カロリー」、もう一つは「低カロリー」と書いてあるミルクシェイクをそれぞれの人に飲んでもらったところ、高カロリーと書いてあるものを見ていた時に食欲を上げるグレリンというホルモンが上昇し、飲んだ後はグレリンの分泌が低下して満腹感が得られました。
一方、低カロリーと書いてあるものの方は見ても飲んでもグレリン分泌量は変わりませんでした。低カロリーと書いてあると満足感が得られないという結果となりました。
好きなものを食べた方が満足感が得られるのかもしれません。量を加減すればダイエットにつながるのではないかと思われます。
8)1日3度の食事を12時間以内に摂る
1日3度の食事は12時間以内、できれば10時間以内がベストです。朝の7時に朝食を摂り、夕方5時に夕食を摂るというのがベストです。
つまり、昼食から夕食までの時間が長ければ長いほど過食になるということです。昼の12時くらいに昼食を摂り、帰宅後10時から夕食を摂る人は要注意です。
9)朝に運動、朝食が太りにくい身体を作る
朝に運動するグループと夕方に運動するグループでは朝に運動するグループの方が筋力が優れているという結果が出ています。また、朝食にたんぱく質を摂取するグループとたんぱく質を少なくするグループでは、たんぱく質をたくさん摂っている人の方が平均筋肉量、握力、歩行数が多くなったという結果が出ています。
このことから、朝にウォーキングをして、納豆、卵、牛乳などのたんぱく質を摂ることで活動的な身体作りができ、ひいてはダイエットにつながります。

おわりに
ダイエットには脂肪を燃焼させて体重を減らす方法と、食事を減らして体重を減らす方法の2種類があると思います。後者はまちがって行うと、リバウンドをしてかえって太ってしまう恐れがありますし、健康を害する場合も考えられます。
 食欲をコントロールすることで、自然体で食事を制限することができます。具体的には早寝早起き、太陽の光を浴びてウォーキング、朝食を和食でたんぱく質や糖質を摂り、12時間以内に控えめな夕食を摂ることです。
 人それぞれの生活パターンがありますので、無理にこれに合わせようとすると長続きしませんし、ストレスで過剰な食欲になってしまう恐れがあります。ご自分でできることから始めていただけたらと思います。
 様々な環境によって歪(ひずみ)ができた身体を鍼治療によってリセットできる生体制御療法を東洋医学研究所®やそのグループが実践しております。是非、お受けになり、健康維持にお役立て下さい。

参考文献
 柴田重信:時間栄養学とは.Tarzan.776.10-21.2019