生活で感じる痛みの疑問 令和2年3月1日号 東洋医学研究所®グループ  二葉はり治療院 院長 甲田久士

はじめに
「なぜ痛いのか?」そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか?怪我をして組織が壊れると必ず痛みが起こります。しかし、同じ怪我でもその人の置かれている状態や怪我をした部位によって痛みの感じ方や大きさ、さらにその後の経過が大きく異なります。このように、単純に「痛み」といっても、その発現機序や経路は様々で、一言では説明できません。
そこで、今回は生活で感じる痛みの疑問について考えてみたいと思います。

感情がどのように痛みに影響するのか
怒ったりイライラしていると急に痛くなったり、普段何でもない痛みがとても強く感じられた経験はないでしょうか?痛みに伴うストレスが副腎髄質に影響を及ぼしカテコールアミンが分泌され、血糖値の上昇、血圧の上昇、免疫に関するリンパ組織の活動抑制、過剰な胃酸分泌など様々な反応を引き起こします。さらに怒りや悲しみ、イライラなどのストレスが痛みそのものの感受性を変えてしまうことも知られています。
ストレスを脳で感じると視床下部を介して下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンを分泌することで副腎皮質に働きかけ、ノルアドレナリンを分泌し血中に放出し、痛みを感じる神経や侵害受容器を刺激して痛みが生じます。
一方、不安が続いてうつ病などを発症すると、セロトニン含有神経の活動が低下し、セロトニン量が減ることが知られています。もともと、人間には痛みから逃れるための防御機構(自己鎮痛)が備わっています。セロトニンは、中枢では痛みに関係する神経の活動を抑制する働きがある物質です。ストレスが長期化すると、セロトニン含有神経も活性が阻害され、自己鎮痛が生じなくなって痛みが増強します。
以上のことから、怒りや不安などの感情的ストレスが加わると普段よりも痛みを強く感じることになるのです。感情を乱さないことが痛みの予防につながります。

生活習慣がどのように痛みに影響するのか
痛みが慢性化すればするほど、様々な要因が関与してきます。生活習慣を改善することで、痛みを予防することが可能ではないでしょうか?痛みとの関連性が深い、一番身近な生活習慣は「お酒とタバコ」です。適度なお酒は「百薬の長」といわれており、痛みに限らず様々な病気に効果があるように思われがちです。実際に、筋肉のコリなどで血液の流れが悪い患者さんは、お酒を飲むことで血液の流れがよくなれば、障害部位などにとどまっている発痛物質を洗い流すことになり、痛みを抑制する可能性があります。ただし、これは1つの例であり、痛風や関節痛のようにお酒により痛みが悪化する病気もあります。また、過度の飲酒は痛みを悪化させるとの報告もあります。お酒はその飲み方により、痛みの軽減にも悪化にも関与する難しい嗜好品です。
一方、タバコには血管を収縮させる作用があることが知られています。そのため、タバコを吸えば血流が阻害され、組織の修復を遅らせます。また、血管が収縮すれば発痛物質は局所にとどまり、痛みをさらに悪化させる可能性があります。そのため、タバコは「百害あって一利なし」といえるでしょう。
さらに、肥満も痛みの原因になります。特に筋骨格系の痛みでは、その傾向は著明です。体格指数(BMI)が30以上の人は、それ以下の人と比べて腰痛の発生率が高いことが知られています。これは腰痛に限ったことではなく、膝痛でも肩こりでも同じような傾向が見られます。そのため、痛みの種類によっては体重をコントロールすることも大切なことです。
このように、生活習慣を改善するだけでも痛みをコントロールすることは可能です。痛みのある人は生活を工夫してみましょう。

おわりに
疼痛に効くNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を鎮痛薬として服用している場合は、鎮痛効果はありますが、胃腸障害や腎機能障害、内出血などの副作用を起こすことがあります。
鍼治療は鎮痛効果があり、その鎮痛効果が自律神経系、免疫系、内分泌系にフィードバックされ、生体のホメオスターシス(恒常性)の歪みを元に戻そうとします。
東洋医学研究所®黒野保三所長は、各種疼痛疾患に対する鍼治療と超音波の併用治療の臨床研究において、約92%の有効性を報告されています(黒野保三所長の研究業績参照)。
鍼治療は副作用もありません。黒野保三所長の統合的制御機構の活性化を目的とした鍼治療(生体制御療法)は神経生理学・解剖学の基礎実験から実証医学的に証明された裏付けのある治療方法です。痛みを感じたら我慢せずに鍼治療を受けられることをお勧めします。

引用文献
・伊藤和憲著:よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ.秀和システム.2011