腸内細菌と健康長寿 東洋医学研究所®グループ  海沼鍼灸院 院長 海沼 英祐 令和2年5月1日号

はじめに
2017年と2018年のコラムで、腸内環境と免疫力の関係について書かせて頂き、腸内環境が整っていることの重要性と、腸内細菌の活性化が免疫力に繋がることについて説明いたしました。
今回は、腸内細菌についてさらに分かってきたことを報告させて頂きます。

腸内環境について
人の腸内細菌(常在菌)は、善玉菌が約2割、悪玉菌が約1割、日和見菌が約7割から成っています。善玉菌は、人の健康に有益な菌で、ビタミン生成や免疫機能の維持で活躍します。他にも、善玉菌が体内の炎症を抑える働きがあることも分かってきました。
腸内にいる常在菌に対して、ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品の菌は、通過菌と呼ばれています。通過菌は、腸には住み着かずに出て行ってしまいますが、腸の中を通過する際に良い物質を出して常在菌を助けてくれます。
今現在も調査が続いている、京都府立医科大学准教授の内藤裕二先生らによる京都府北部の京丹後市に住む高齢者の長寿の秘訣を探る疫学調査「京丹後長寿コホート研究」で、腸内の善玉菌の一つである酪酸菌が腸内に多いと健康長寿であることが分かってきました。

酪酸菌の効能
酪酸菌は、腸内で酪酸という物質を作り出します。酪酸は、主に大腸が正常な働きをするためのエネルギー源として使われます。大腸の粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーの約60~80%は酪酸でまかなわれていて、大腸が正常に機能するための重要な物質です。また、アレルギー疾患やインフルエンザなどの感染症、さらには糖尿病やがんとの関連が研究され、酪酸が健康維持に大きく貢献している可能性が分かってきています。
ところで、この酪酸菌を含む食品は非常に少なくて、ぬか漬けと臭豆腐くらいです。そのため、食事から酪酸菌を摂るのは難しいのです。しかし、食事を工夫することで、この酪酸菌を増やせることが分かってきました。

酪酸菌を増やすには
腸内の善玉菌のエサとなるのは食物繊維です。食物繊維を多く摂ることで腸内の善玉菌を増やすことができます。さらに、食物繊維には大きく分けると水に溶けやすいもの(水溶性)と水に溶けにくいもの(不溶性)があり、特に腸内細菌のエサになりやすい水溶性食物繊維を意識して摂ることが大切です。水溶性食物繊維を多く含む食品としては、海藻類やキノコ類、豆類やらっきょう等があります。これらの食物を中心に、一日20g以上の食物繊維を摂ることが望ましいそうです。また、食生活の改善だけでなく、運動習慣の改善も腸内の酪酸菌を増やすのに効果的です。継続的な運動の習慣で、酪酸菌が増えるという研究結果が報告されています。ランニングやサイクリングなどの有酸素運動も有効だそうです。

おわりに
今回、「腸内細菌と健康長寿」というテーマで、最近の研究で新たに分かってきた酪酸菌と健康長寿の関係を中心にお話しさせて頂きました。
食生活の改善と継続的な運動が腸内環境を変えて健康の増進に繋がります。そして、東洋医学研究所®とそのグループが実践している生体制御療法は、黒野保三先生が実証医学的に検証された健康増進に最適な治療です。継続的な鍼治療と食事や運動を見直して、健康長寿に役立てて頂きたいと思います。

引用文献
・NHK総合テレビ ガッテン! 2019年11月20日放送
「長寿&がん予防で注目!腸内細菌パワー覚醒術」
・武田コンシューマーヘルスケアWEBサイト 
「酪酸菌大百科」